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chapter9

LastGuardianIIStarting Stars

chapter9「Stand up and go」

12月28日PM9:32。
第44エクステンドステーション医務室に、レドナは居た。
そして、あの事件から3日とちょっとぶりに意識を回復した。
ベッドから、半分起きる。

レドナ「・・・・・・はやて」

完全に傷は癒えたわけではなかった。
表面上の傷は、もう目立たなくなってきている。
しかし心に刻まれた傷は、癒えそうになかった。

愛した人物が、自分が守ろうとした人物が、敵であった。
その傷が、レドナをどん底まで苦しめていた。

レドナの戦意は、衰えるどころか完全に消滅していた。

その時、医務室のドアが開いた。
そこには、エンフィとシーフォが居た。

エンフィ「やっほ~、傷大丈夫そう?」
レドナ「・・・・・まぁな」
シーフォ「デモンアルターの主、はやてさんの件についてはフィーノさんから聞いたわ。
     けど、あの状況だとただの学校の友人とは思えないけど?」

鋭いシーフォの指摘が飛ぶ。

レドナ「・・・・・・・」

黙りこくるレドナ。
今は、一言喋るのが、なぜかどっと疲れる。
しかし、このままでは何も変わらない。
そう決心したレドナは、2人に全てを打ち明けた。

レドナ「・・・・俺は、はやての事が好きだった。
    いや、今も好きだ・・・・けど、あいつはデモンアルターの主だった」

伝えるべきことを、レドナは重い口調で言った。

シーフォ「もし、デモンアルターの主を抹殺せよ、という命令が出たらどうするかしら?」
レドナ「・・・・できないと思う。
    ・・・逆に、はやてを抹殺しようとするガーディアンを殺す」
シーフォ「でも幸い上からの命令は"デモンアルターの奪還"。
     そのためには手段を選ばないということよ」
レドナ「っ――――」

デモンアルターをどうやって奪還するか。
それは、主を抹殺すれば早い話。
逆に言うと、主を抹殺する以外の選択を取れば、こちらが危うくなるということ。

シーフォ「それともう一つ。
     もしはやてさんが、今反エクステンド機関に捕まっていると――」
レドナ「それは、もしじゃない、事実だな」

シーフォの問いを聞き終える前に、レドナが言った。
レドナの問いに、シーフォは黙って頷いた。

エンフィ「調査によると、ベルゼルガの1人が反エクステンド機関に捕まったようなんだよ。
     それを助けるために向かったけど、はやてちゃん達も捕まったって落ちなんだ」
レドナ「・・・・けど、もう俺にはどうしようもない。
    はやては・・・・・はやては・・・・っ!!!」

足にかかっている布団を握り締めた。

シーフォ「いきなさい、レドナ君」
レドナ「・・・・でも、俺には力が無い」
シーフォ「起きられるわね、ちょっと着いて来て」

レドナは、不思議に思いながらも、下を向きながら起き上がり、2人の後に続いて医務室を出た。
通路を渡っていくと、厳重なロックがかかった部屋へと連れて行かれた。
そこの中にあったものに、レドナは目を疑った。

レドナ「な、なんだよこれ・・・・!?」

見渡す限り、その部屋は機械に埋め尽くされていた。
様々な端末があり、モニターが明滅している。
その中心部に、"それ"はあった。

エンフィ「クァルファーレの黒衣を改修して作った、ゲルペフェーレの黒衣。
     私達が、独自に開発した第三次エクツァーンモデル対応のリーンジャケットだよ」

確かに、外見はクァルファーレとさほど変わりは無かった。
しかし、肩の部分につけられた新規アーマーなどが、力強さをさらに物語っている。

レドナ「第三次エクツァーンモデル・・・・?」
エンフィ「うん、以前までの弾丸ロード方式を変更して、空間移動エネルギー方式にしたんだ」

簡単に説明すると、こういうことになる。
以前までは、レムリアブレッドを詰め、その中の弾丸からレムリアの力を受けていた。
しかし、今回はこのゲルペフェーレの黒衣の肩の新規アーマーが鍵となる。
アーマー部分に、小型の空間転送装置をつけておく。
そして、このエクステンドステーションからエネルギーを転送装置に送り込み、使用者の武器に流すというわけだ。
そのため、武器の柄には、肩アーマーと武器とを繋ぐチューブがつけられていた。

エンフィ「さ~て、弾丸のロードが無くなったぁ~!
     どういうことを意味するか、レド君なら分かるよね?」
レドナ「あぁ、以前の戦闘スタイルでいけるってわけだ」

そう、以前の戦闘スタイル。
それは大剣を2本使う破壊力抜群の戦闘方式。
漆黒の大双剣の異名の元である。

エンフィ「そうそう、そのとぉ~り!」

エンフィが指を鳴らすと、作業員らしき人が2人で大きな台を押してきた。
その台にかかった布を取ると、2本の大剣がレドナを待っていた。

エンフィ「グリュンヒル・イノセントと、グリュンヒル・テラブレイカー」

どちらの両刃も、蒼く澄んだ色をしていた。
漆黒、という固定概念があったグリュンヒル。
しかし、こういう色の配色で、また新たな力を示唆している気がした。

レドナ「だが、それだけじゃ反エクステンドには勝てない。
    反エクステンドはそれぞれ各ステータスにずば抜けているものが多い」

例えて言うならば、カエデはトライヴァルの緋衣にて移動能力が極めて高い。
カースは、以前の戦闘からしても攻撃力が極めて高い。
ロクサスも、エクツァーンモデルを使った今は魔力が極めて高い。

エンフィ「ちゃんとそこも考えてるって!
     そ・こ・で」

またエンフィが指を鳴らす。
すると、今度は作業員が6人で、大きな台を押してきた。
その布を取ると、3つの機械武装がそこにあった。
分かる限り、側面にローラースケートのタイヤがついた靴。
後方部分に、ブースターのようなものが付いているベルト。
甲の部分に、赤色の宝石が嵌っている手袋であった。

エンフィ「戦闘データを基に、急ピッチで作ったんだぁ」

エンフィが、靴を手に取り説明する。

エンフィ「これがエルフスターター、対カエデ戦の超高速戦闘装備。
     側面についているローラーで、トライヴァルの緋衣なみの移動力が出せるんだ」

次に、ベルトを手に取る。

エンフィ「こっちはスティングアンカー、対エルザ戦の罠破壊用装備。
     どうやらアイツは罠を仕掛けるのが得意らしいから、その時はこのアンカーを発射させれば、物を切ることもできる。
     それに、少し魔力を使ってやれば、魔力ビームも撃てるんだ」

最後に残った、手袋を手に取る。

エンフィ「最後に、テルトルトシールダー、対カース、クロム、ロクサス戦の物理魔法攻撃防御装備。
     これは、説明不要だね、その名のとおり、自動防御シールド展開装置だよ」

全てを受け取り、最後にレドナは新たなる黒衣、ゲルペフェーレの黒衣を見に纏った。
すると、自動的に先ほどの3つの装備が装着される。

レドナ「ありがとう、エンフィ、シーフォ」
エンフィ「どーいたしまして!」
シーフォ「でも、後でもう一人お礼を言っておいたほうがいいわよ」

今は、レドナにはその意味がわからなかった。
しかし、すぐにそれは分かるときが来た。

完全に装備をして、数分後、すぐに出撃をしたいというレドナの要望を聞き入れ、シーフォは出撃命令を出した。
しかし、今回はレドナ1人での作戦となる。
反エクステンドの基地に行っている間に、襲撃がある可能性が大きいからだ。
だが、これはレドナの考えであった。
それに、理由はもう一つある。
それは、反エクステンドステーションへの移動方法だ。
今回レドナはエルフスターターの高速移動を使い、第44エクステンドステーションに設置されている移動カタパルトから出撃する。
カタパルトの先端に、大きな空間移動魔法陣が展開され、そこを通って行く流れだ。
このカタパルトは、まだ未完成で危険が伴うが、今はそのようなことは言ってられない。

そして、今レドナはカタパルトの上に立っていた。
左耳につけた通信機から、出撃の合図を待つ。

???「出撃準備はいいですか?」

聞き覚えのある、無表情の声が聞こえてきた。
一瞬でレドナはそれが誰なのか分かった。

レドナ「お、桜花 沙唯!?」
サユ「えぇ、でも本名はサユ・イルフィニッツです」

この無表情の声からすると、嘘ではないようだ。

サユ「とりあえず、詳しい話は後で。
   準備が整ったら、発進シークエンスを開始します」
レドナ「あぁ、いつでもいいぜ!」

少しまだ残る驚きを隠しきって、レドナは力強く答えた。

サユ「エンフィ、魔法陣の位置設定は大丈夫ですか?」
エンフィ「もっちろん!」

灰色のカタパルトの先に、白色の魔法陣が一瞬で現れた。

サユ「スタンバイ、オールグリーン。
   出撃、どうぞ」

サユにしては、少し力強い声で言った。
同時に、カタパルトの左右に、赤い光が走る。

レドナ「いくぜぇっ!!!」

エルフスターターを一気に加速させる。
地面とローラーがこすれ、思いきり煙を噴射する。
グリュンヒル・イノセントと、グリュンヒル・テラブレイカーをスタビライザー代わりにする。
自動車よりも早い速度で全長100mのカタパルトを3秒で駆け抜けた。
そして、魔法陣の中に入り、次の瞬間には、反エクステンドステーションの目の前にいた。

真っ暗闇の中、反エクステンドに感づかれたらしく、サイレンの音が鳴り響いた。

レドナ「ちっ、さっさと終らせてやる!!」

再び、エルフスターターを加速させた。
反エクステンドステーションのドアをグリュンヒル・イノセントの魔力砲撃で粉砕した。
中に入ると、沢山の兵士がレドナを待ち構えていた。
どうやら、こちらもデモンアルターの奪還に来ることを察していたらしい。
しかし、レドナの目的は悪魔ではやてであった。

レドナ「そこを・・・・」

レドナの脳裏に、赤い閃光が小刻みに折れた姿が映る。
そして、グリュンヒル・イノセント、テラブレイカー、テルトルトシールダー、スティングアンカーを砲撃モードにした。
グリュンヒルは2本とも先端が割れる。
肩のアーマーから、エネルギーが送り込まれ、刃が一層蒼く光る。
テルトルトシールダーは赤い光を放ち続け、スティングアンカーはクロー部分が展開した。

レドナ「どけぇぇぇぇっ!!!」

グリュンヒルの先端からは蒼い魔力の閃光が。
テルトルトシールダーからは赤い魔力の閃光。
スティングアンカーからは黄色の魔力の閃光が放たれた。
計6本の大小の閃光は、敵の群れを一瞬にして薙ぎ払った。

レドナ「デモンアルターの主の場所を教えろ!」

かすかに息のある兵士の胸元を掴んで言った。

兵士「き、北にある・・・・Tブロック・・・だ」

そこまで聞き終えると、レドナは再びエルフスターターを加速させた。
途中の通路で、レドナは2人とであった。

エルザ「はぁ~い、反逆者レドナ~!」
クロム「単機で突っ込んでくるとはぁ、気に入ったぜ!」

レドナ(奴等が、エンフィの言っていたエルザとクロムか)

小柄な女エルザと、大男クロムを見てレドナは思った。
エルザであるなら、この通路罠が仕掛けてあるはずだ。
だが、レドナには通用しない。

エルザ「Tブロックに行くには、ここを通らないとだめなんだよねぇ~」
クロム「ようするに、俺らと戦うってことだぁ!」
レドナ「いいだろう、まとめて塵にしてやるぜ!!」

エルフスターターを加速させる。
同時に、スティングアンカーを前に出した。
クロー部分がカッターとなり、見えないピアノ線を切り裂いた。

エルザ「えぇっ!?罠がバレちゃった!!」
レドナ「いっけぇぇっ!!」

グリュンヒル・イノセントに魔力が入る。
そのまま、エルザを切り飛ばした。

エルザ「きゃぁぁぁっ!!」
クロム「うぉらぁぁっ!!」

巨大なパンチが横から飛んできた。
しかし、レドナはその場から動かず、右手の甲を向けた。
テルトルトシールダーが反応し、自動的に対物理魔法防御のシールドを展開する。
その隙に、レドナはグリュンヒル・テラブレイカーでクロムを切り上げた。

クロム「うぐっ!!」
レドナ「しばらくそこで黙っとけ!」

地面に倒れた2人を放置して、レドナはTブロックへと向かった。
途中、幾人もの兵士が進行を阻止しようとしたが、新装備を身に纏ったレドナの敵ではなかった。
エルフスターターのおかげで、対クロム、エルザ戦から3分後にTブロックに着いた。
ドアを切り裂くと、中は左右に牢屋がずらりと並んでいた。

シュレス「・・・・・っ!?」

その中に居た、シュレスがこちらに気づく。

レドナ「大丈夫か、シュレス?」

すぐに、シュレスが入っている牢をグリュンヒル・イノセントで切り裂いた。
立ち上がるのに、よろけたシュレスに、レドナは手を差し伸べた。

レドナ「他の奴等は?」
シュレス「すまない、私には・・・・」

シュレスが下を向いた。

レドナ「気にすんな、どうせここの何処かに居るんだ。
    虱潰しに探して回るさ」

そういって、レドナはエルフスターターを加速させた。
奥に向かうと、ヒィリスが居た。
同じく、牢を切り崩し、ヒィリスを助け出す。

ヒィリス「そ、その・・・ありがとう、レドナ君」
レドナ「礼はいらない」
シュレス「それも、任務の内だからか?」

後からついてきたシュレスがたずねた。

レドナ「いや、、個人の意思でここに来て、個人の意思で助けたからだ」
シュレス「・・・・主が言っておられた、お前の優しさか・・・・」
レドナ「まぁ、そんなもんでいい。
    シルビアとはやてはここじゃないようだから、他の所を探す」
ヒィリス「2人はさっき、ここから連れて行かれました。
     たしか・・・・ザルバという人に、Rブロックに連れて行くとか」

思い出しながらヒィリスが言う。

レドナ「分かった、2人は戦えそうか?」
シュレス「主からの命令だ、『レドナが来るはずだからそれの手助けをしろ』と」
ヒィリス「はやてちゃん達を助けたい意思は私達も同じですから」

笑顔でヒィリスが言う。
それに、同じく微笑してシュレスも頷く。

レドナ「じゃあ、目標はRブロックだ、いくぜ!」

エルフスターターのローラーを戻し、3人は走ってRブロックへと向かった。
Rブロックへ向かう途中に、再び強敵が現れた。

カース「来たな、反逆者」
レドナ「カース・・・・エリンス!!」

静かな声が、3人の耳に届く。

カース「お前達も知っているとおり、はやてとシルビアはこの先だ。
    だが、感づいているとおり簡単にここは通せない」
レドナ「どかないなら、お前の命は無いぞ、カース!!」

グリュンヒルの刃を前方のカースに向ける。
蒼い光の刃の何処かに、怒りの色があった。

カース「愚かな反逆者よ、お前がBFB事件を起こさなければ、俺たちとともに戦えたのにな」

カースが大剣、デルバルスを具現化させた。

シュレス「先に行け、レドナ!」
ヒィリス「ここは私達が引き受けますから」

2人が武器を具現化させ、リーンジャケットを身に纏う。

シュレス「その代わり、絶対に2人を助け出せ」
レドナ「あぁ、分かった!
    死ぬんじゃないぞ!!」

レドナはカースの横をすり抜けた。
もちろんカースはデルバルスを振り上げたが、シュレスのチェーンブレイバーがそれを阻止した。

カース「ふん、まぁ、誰が来ようと結果は変わらない。
    レドナも愚かな選択を取ったな」
シュレス「どちらが愚かか、今思い知らせてやろう!
     いくぞ、ヒィリス!」
ヒィリス「えぇ!」


一方、Rブロック。

ザルバ「どうやら、うるさいハエが入ってきたようだな」
カエデ「私らも加勢してこよっか?」

トライヴァルの緋衣を来たカエデがたずねる。
その手には、グリュンヒル・プリンセスが握られていた。

ザルバ「いや、カースがうまくやってくれることだろう。
    カエデとロクサスはもしものためにここに残れ」
カエデ「・・・・ん、了解」
ロクサス「分かった」

ザルバは、確認すると、磔になっているはやての元へと歩み寄った。

ザルバ「全く、お前のようなものがデモンアルターに憑かれるとはな。
    所有権が私に無いのが残念だ」

そういって、左手に持つデモンアルターを軽く叩いた。

ザルバ「・・・・だが、私には真実が見えている。
    お前はこのデモンアルター、"誰に渡してもらった"のだ?」
はやて「・・・・ウチもよう分からへん・・・。
    白いコートを着た人が、ウチにくれたんや」
ザルバ「やはり、ヒドゥンの仕業か・・・・。
    まったく、彼が何を考えているのか理解不能だ」

呆れたようにザルバが言う。

ザルバ「この本の犬は何も知らないのか?」

鋭い目つきで、その横に両手足を縛られたシルビアに聞いた。

はやて「犬やなんて、そんなこと言ったらウチが・・・・あぁぁっ!!!」
シルビア「はやてぇっ!!」

十字架の磔台に、電流が流れた。

ザルバ「そんなこと言ったら・・・・なんだ?」
はやて「ウチが・・・・」

その時、ドアが粉砕した。
音を立てて、鉄の扉が崩れ落ちる。

レドナ「そんなこと言ったら、俺がお前をぶっ殺す!!」

すぐさま、レドナはグリュンヒルの砲門を開いた。
蒼い閃光が、ザルバ目掛けて走る。
しかし、カエデが高速移動でザルバの前に立ち、レムリアを帯びたグリュンヒル・プリンセスで弾いた。

はやて「あ、暁君!!」
シルビア「れ、レドナ・・・」
ザルバ「来たか、反逆者・・・・・レドナ・ジェネシック!!」

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